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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

株式価値の算出モデルについて

本ページでは、株式価値を算出するにあたり用いられる理論モデルについてまとめたい。

配当割引モデル

株式から得られるリターンは、配当によるインカムゲインと、将来に株式を売却することにより得られるキャピタルゲインの2つに大別される。つまり、株式のリターンrは、

r=(P1-P0)/P0 + D1/P0 

と表せる。P1は1年後の株価、P0は現在の株価、D1は1年後の配当である。これをP0について解くと、

P0=(D1+P1)/(1+r)

となる。

同様に、

P1=(D2+P2)/(1+r)

P2=(D3+P3)/(1+r)

であり、これらを逐次代入することによって、

という式を得る。これは、現在の株価は将来にわたって得られる配当の現在価値の総和に等しいということを示している。このモデルを配当割引モデルという。

 

仮に配当額が将来にわたって一定の場合、無限等比級数の公式により、上記式はP0=D1/rとなる。

また、配当額が一定割合(g)ごとに成長する場合、現在の株価はP0=D1/(r-g)と表せる。

 

rは、いわゆる「資本コスト」と呼ばれるものである。資本コストの算出については、以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

どのようにgを決定するか

では、どのようにgを決めれば良いのか?

まず、第1期におけるEPS(一株あたり純利益)を考える。基本的に、この純利益は株主に帰属し、配当(D)という形で還元される訳だが、その一部を内部留保とし、それを再投資することによって、さらなる成長を見込むことができる。

 

再投資によるリターンをR、内部留保率をaとする(つまりこのとき配当性向は1-aになる)と、第2期のEPSは、

EPS2=EPS1 + R×(a×EPS1)

         =EPS1×(1+a×R)

このaRを、 EPSの成長率と考えることができる。ただし、この値をgとする場合、aも Rも一定である必要がある。

 

成長機会の現在価値

もし仮に純利益の100%を配当に回す場合、D=EPSである。配当額が成長しない(g=0)とき、第0期の株価は、

P0=D1/r = EPS1/r 

となる。しかし、純利益の一部を再投資に回した場合、さらなる成長を見込むことができる。そしてこれは、株価にも反映されると考えることができる。再投資によって株価にプラスされる価値をPVGO(present value of growth opportunity、成長機会の現在価値)という。

P0 =EPS1/r + PVGO

PVGOは、R>rのときプラスとなる。