<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

アンレバードベータとは何か

本ページでは、アンレバードベータ(β)とは何かについてまとめたい。

 

資本コストの算出

企業価値を評価するとき、資本コストを算出する必要がある。資本コストは、WACCという手法により算出することが一般的である。資本コストやWACCの式については以下のページで説明している。

hongoh.hatenablog.com

WACCに基づけば、資本コストは負債コスト(r_d)と株式コスト(r_e)の加重平均をとることによって求められる。このうち、r_eの算出方法の一つにCAPMが挙げられる。CAPMについては以下を参照。

hongoh.hatenablog.com

CAPMのβは、上場企業については過去の株価から算出可能であるが、非上場企業等についてβを求めることは困難である。そこで登場するのが、

アンレバードベータという考え方である。

 

アンレバードベータ

具体的には、以下のような手順で企業Aのβを求めることができる。

①企業Aと同様の事業を行なっておりかつβが算出可能で、資本構成(負債と株式の比率)のみが異なる企業Bのβを求める(企業が複数ある場合にはβの平均を取ることができる)

②企業Bを無負債化した状態(つまり「アンレバード」)の負債をβuを求める

③βuに企業Aの資本構成を反映させることで、企業Aのβを求める

 

ここで、②で登場するβuこそが、アンレバードベータに他ならない。ここで行なっていることは、βが算出可能で同種の事業を行なっている他の企業のβを基に、資本構成の違いを調整することによって対象となる企業のβを推計するということである。その過程で、いったん他企業の資本構成をクリアにする(レバレッジを解除する)プロセスを挟む必要があり、これによって求められたβがアンレバードベータである。

 

逆にいうと、レバレッジを解除する前のβは「レバードベータ」と呼ばれる。そして、レバードベータとアンレバードベータの関係は以下の式で表現される。

βeは株式のベータ、βdは負債のベータ、D・Eはそれぞれ負債と株式の水準である(負債のベータはしばしばゼロと仮定される)。上記式によって、手順②では企業Bのデータを代入してβuを算出し、手順③ではこのβuと企業Aのデータを代入することにより企業Aのベータを求めることができる。

 

上記のDについて、純負債(負債総額から余剰現金を差し引いた額)を用いることが一般的である。

 

(出典):

上村昌司(2020)「アンレバードベータとレバードベータ」国際ビジネスファイナンス研究会報告書 第4巻