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個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

ジニーメイ、ファニーメイ、フレディマック…米国の住宅金融関連機関について

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本ページでは、ジニーメイ(Ginnie Mae)、ファニーメイ(Fannie Mae)、フレディマック(Freddie Mac)とは何かについてまとめたい。一言でいえば、米国でMBSの投資家への元利金支払いを保証する政府系の機関であり、住宅ローン市場への資金供給の一翼を担う。

 

MBSとは

まず、これらの機関が保証の対象とするMBSとは何かについて説明する。MBSは、Mortgage Backed Loanの略で、「不動産担保証券」と呼ばれる。不動産ローンを証券化した商品のことである。

証券化とは何か、そして証券化商品の分類については、それぞれ以下のページを参照されたい。

hongoh.hatenablog.com

hongoh.hatenablog.com

 

ジニーメイ

ジニーメイは、米国の住宅都市開発省の下に設置された政府機関である。証券化商品であるMBSを購入する投資家は、MBSからの元利金の支払いを受けるが、元利金の支払いが遅延した際に、この支払いをジニーメイが保証する形となっている。

 

以下に示すファニーメイフレディマックと違い、「政府機関」であることが重要で、ジニーメイによって保証を受けたMBSは「政府保証」を受けたことになる。こうしたMBSを「ジニーメイ債」と言うこともある。

 

ファニーメイ、フレディーマック

これらは株式会社であるものの、政府支援機関(GSE, Government Sponsored Enterprise)の一つであり、いわゆる政府系金融機関である。ジニーメイと同様MBSの元利金保証を行うが、ジニーメイとは違いこれらは政府の一部門ではなく、あくまで民間の企業という建付けではある。もっとも、GSEが資金調達のために発行するGSE債は、国債に次ぐ安全資産として認識されている。

 

ファニーメイフレディマックは、MBSの保証のみならず組成も行う。さらに、ポートフォリオ投資を行っている点も特徴的である。

 

このように保証を受けたMBSは、レポ取引などにおける担保として使用されることもある。

 

(参考):

小林正宏(2013)『米国政府抵当金庫(ジニーメイ)の最近の動向』Housing Finance 2013 Winter

 

FRTBにおける資本賦課額算出の標準的方式について

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本ページでは、FRTBにおけるマーケット・リスクに対する資本賦課額算出の標準的手法についてまとめたい。ここでは数式は使わず、概念をまとめているのみなので、厳密な定義や数式等の詳細は告示文書や、文末の参考文献等を参考にされたい。

 

FRTBとは

2016年1月、バーゼル銀行監督委員会バーゼル委)は、金融危機を踏まえた規制改革の一環として、バーゼルⅢにおけるマーケット・リスク規制の規則文書(「マーケット・リスクの最低所要自己資本」)を公表。これは、トレーディング勘定におけるマーケットリスクの資本賦課の在り方を抜本的に見直すものであり、FRTB(Fundamental Review of Trading Book)と呼ばれる。その後、 2019年1月、バーゼル委が見直し作業を完了し、最終規則文書が公表された。

 

標準的方式の概要

標準的手法においては、以下①〜③に対する資本賦課額を単純合算する。

①感応度方式による価格変動リスク

金融商品がデフォルトに至るリスク

③その他のリスク

以下、それぞれについて詳述する。

 

①感応度方式による価格変動リスク

ここでは、ある要因(リスク・ファクター)により、取引する商品の価格が変動するリスク(デルタリスク)に対する資本賦課額を計算する。

まずは、取引する商品を以下の7種類のリスククラスに分類する。

①一般金利リスク

②信用スプレッド・リスク(証券化商品以外)

③信用スプレッド・リスク(証券化商品)

④信用スプレッド・リスク(証券化商品のコリレーション・トレーディング・ポートフォリオ

⑤株式リスク

コモディティ・リスク

外国為替リスク

各リスク・クラスにおいて、さらに共通の性質を持つリスク・バケットにグルーピングする。例えば、⑤株式リスクであれば、時価総額の大きさ地域セクターで13個のバケットに分類される。①一般金利リスクであれば、各通貨バケットとなる。

紛らわしいが、要するにリスク・クラス>リスク・バケット という包含関係である。

 

そして、各リスク・クラスにおいて、商品の価格を変動させる変数リスク・ファクター)が定められている。例えば⑤株式リスクであれば、株式のスポット価格やレポレート、⑦外国為替リスクであれば為替レートである。

 

以上を踏まえ、次の手順で資本賦課額を算出する。

  1. それぞれのリスク・バケットにおいて、各リスク・ファクターが変動した場合の商品価格の変動額(感応度)を算出。この感応度に、所定の変動幅(リスク・ウェイト)を掛け合わせることで、各リスク・ファクターに対する資本賦課額が算出される。
  2. 次に、1.で算出した、リスク・バケット内の各リスク・ファクターに対する資本賦課額を合算し、リスク・バケットごとの資本賦課額を算出する。このとき、リスク・ファクターごとの相関関係を考慮するので、単純合算ではなく、リスクファクター間の相関係数を適用して算式に用いる。
  3. 各リスク・バケットの資本賦課額を合算して、リスク・クラスごとの資本賦課額を算出する。ここでも、リスク・バケットごとの相関関係を考慮するので、単純合算ではないことに注意。
  4. 最後に、各リスク・クラスの資本賦課額を単純合算する。

オプション性を有する商品については、追加的にベガ・リスク、カーベチャー・リスクに対する資本賦課も求められるが、ここでは割愛する。

 

金融商品がデフォルトに至るリスク

①に加えて、クレジット系の商品がデフォルトに至るリスク(Jump-To-Default Risk)に対する資本賦課額も算出する。これは、ストレス時に発生するデフォルトによる損失のリスク(テール・リスク)を補足したものとなっている。

  1. ある発行体において、エクスポージャーごとにグロスのデフォルト時の損失額(JTD額)を算出する。JTD額は、額面にデフォルト時損失額(LGD)を掛け合わせ、時価評価損益を加えた額である。
  2. 同一の発行体ごとに、1.で算出したロングポジションのJTD額、ショートポジションのJTD額を相殺してネットのJTD額を算出する。
  3. ある発行体におけるネットのJTD額について、格付けに応じたリスク・ウェイトを掛け合わせることで、発行体ごとの資本賦課額を算出。次に、同じバケット(①感応度方式で登場したバケットと同様のイメージ)に属する発行体の資本賦課額を合算する。合算にあたっては、ロングポジション、ショートポジション間のヘッジ効果が勘案される。
  4. 最後に、各バケットに対する資本賦課額を合算する。

 

③その他のリスク

エキゾチックな金融商品(様々な条件が付与されたデリバティブ資産等)などについて、①②では補足しきれないリスクがあると考えられるため、そうした「残余リスク」について、想定元本に一定のリスク・ウェイトをかけた額を資本賦課額として算出する。(本当に正確にリスクを補足しようとするとあまりに複雑になってしまうため、簡便的な手法により代替しているイメージである。)

 

(出典):

金融庁日本銀行(2019)「「マーケット・リスクの最低所要自己資本
の概要」

吉井 一洋、 金本 悠希、 小林 章子、 藤野 大輝(2019)「詳説 バーゼル規制の実務―バーゼルIII最終化で変わる金融規制 」

信用リスク削減手法とは何か

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本ページでは、バーゼル規制における信用リスク削減手法とは何か、その概要についてまとめたい。詳細は金融庁の告示文書や、以下に示す参考文献等を参考にされたい。

 

一言でいえば、自己資本比率規制における信用リスクアセット額の算出に当たり、担保等があれば信用リスクの算出額を一定程度削減することが認められる、というものである。

 

自己資本比率規制における信用リスクについて

まず、バーゼル規制においては金融機関の健全性確保のために、リスク性資産に対して一定程度の自己資本の確保を求めている。これが自己資本比率規制である。リスクの種類には大きく分けて信用リスク、マーケットリスク、オペレーショナルリスクがある。このうち、信用リスクは、与信先のデフォルト等により資金回収ができないリスク、デリバティブ取引における相手方の支払い不能により得られたはずの収益が得られないリスク(カウンターパーティリスク)などである。銀行は、これらの信用リスクが存在する取引の額を計算しリスクの高さに応じて決定される「リスクウェイト」を乗じたうえで、「リスクアセット」として算入しなければならない。

 

信用リスク削減手法

貸出において、融資先がデフォルトしても痛手を負わないように、銀行が担保の提供を求めるケースがある。これは「信用リスクの削減」を行っているに他ならないため、こうした担保がある場合には、「リスクアセット」から一定程度差し引くことが認められている。

 

この信用リスク削減のための手法が「信用リスク削減手法」に他ならない。信用リスク削減には、国債や高格付け債券等の「適格金融資産担保」や、保証、クレジットデリバティブ、貸出金や自行預金との相殺といったオプションがある。

 

そして、具体的な削減方法としては、債権のリスクウェイトを担保資産のリスクウェイトに置き換える方法、債権の額から担保の額を控除してリスクアセットに算入するといった方法がある。削減には、「簡便手法」と「包括的手法」の2種類がある。

 

詳細については、例えば以下の文献等を参考にされたい。

 

(参考):

吉井 一洋、 金本 悠希、 小林 章子、 藤野 大輝(2019)詳説 バーゼル規制の実務―バーゼルIII最終化で変わる金融規制 』

バーゼルⅢにおける自己資本比率規制の概要

本ページでは、バーゼルⅢにおける自己資本比率規制の概要についてまとめたい。

 

自己資本比率規制の概要

自己資本比率規制では、国際的に業務を行っている銀行(国際統一基準行)に対して以下を満たすことを「所要最低水準」として求めている。

 

自己資本比率
(普通株式等Tier1資本+その他Tier1資本+Tier2資本)/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧8%

 

Tier1比率=
(普通株式等Tier1資本+その他Tier1資本)/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧6%

 

普通株式等Tier1比率=
普通株式等Tier1資本/(信用リスク+マーケットリスク+オペレーショナルリスク)≧4.5%

 

自己資本(バランスシートの右側にある)の役割は、バランスシー トの左側にある貸し出しや保有有価証券などの資産が毀損した場合 、その損失を吸収する働きをもつ。


Tier1資本は事業を継続しながらの損失吸収が可能で、Tier2は銀行破綻時に損失を吸収することが想定されている。

それぞれのタイプの資本の具体例は以下の通りである。

普通株式等Tier1資本:普通株式内部留保
その他Tier1資本:優先株式、優先出資証券
Tier2資本:劣後債、劣後ローン、一般貸倒引当金

 

追加的なバッファー

バーゼルⅢでは、以下のように、最低所要水準に加えて追加的なバッファーを求めている。

資本保全バッファー

普通株式等Tier1資本に2.5%の上乗せを求めている。(つまり、最低所要水準と合わせて7%が求められる)

もし資本保全バッファーが毀損されると(最低所要水準と合わせて 7%の水準を下回り、例えば6%となった場合)、その程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。

カウンター・シクリカル・バッファー

信用創造の過熱を防ぐために設けられるバッファー。国によって普通株式等Tier1資本に0~2.5%の範囲で設定される。

カウンター・シクリカルバッファーの考え方については以下を参照 。

hongoh.hatenablog.com

もしこのバッファーが毀損されると、資本保全バッファーと同様、その程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。

 

G-SIBsバッファー

G-SIBsとは、国際統一基準行の中でも、グローバルに活動し、金融システムへの影響が大きい銀行として指定された銀行である(例えば、ゴールドマンサックスやJPモルガンなどが該当)。指定された銀行ごとに、普通株式等Tier1資本1.0~3.5%の上乗せを求めている。

G-SIBsバッファーについても、既存の程度に応じて、配当や役職員への賞与等、資金の社外流出が制限される。


以上をまとめると、自己資本比率規制は以下のように整理される。




(参考):

吉井一洋、金本悠希、小林章子、藤野大輝(2019)『詳説 バーゼル規制の実務 バーゼルⅢ最終化で変わる金融規制』

金融機関の外貨調達手段について

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本ページでは、金融機関の外貨調達手段についてまとめたい。
 

外貨調達の必要性

日本の銀行、特に大手行は、国内だけでビジネスを完結させているわけではなく、海外に貸出を行ったり、海外の有価証券に投資することなどを通じても収益を得ている。その際、ドルをはじめとした外貨の調達が必要になる。
 

 

外貨調達手段

以下が主な外貨調達手段となる。

 

預金

外貨建てでの預金は主要な外貨調達手段である。 日本円で預金されたものを元手に国内企業に貸出を行うことと全く同じ原理である。預金は、比較的安定的( 市場動向に左右されない)調達手段である。預金以外の調達方法には以下に示すようなものが代表的だが、これらはマーケットから調達することから「市場性調達」と呼ばれる。

 

社債

外貨建ての社債を発行することで、外貨で資金を調達可能となる。返済期間の長い社債の方がより安定的な調達手段ということができる。

 

レポ取引

レポ取引とは、国債などの証券と引き換えに資金を借り入れ、金利をつけて返済する、というものである。短期的に資金調達を行う手段として主に金融機関の間で用いられる。

 

資金の借り手をA、資金の貸し手をBとすると、取引開始時に、A が持っている債券をBに貸し出し、その対価としてBから資金を得る。取引終了時には金利(厳密には借入金に対する金利と債券の貸借料の受け取りの差分)を加えて借りたお金を返済し、 逆に債券を返してもらう。これがレポ取引の一連の流れとなる。

 

CD、CP

CP(コマーシャルペーパー)とは、会社が投資家から短期的な資金調達を行うために発行する短期社債のことで、企業の信用力をもとに無担保で発行するものである。

CD(Certificate of Deposit、譲渡性預金)とは、第三者に譲渡可能で自由に金利を設定できる大口の定期預金のことで、銀行など預金を受け入れる金融機関のみ発行することができる。預金をする企業にとっては比較的高金利であるというメリットがあり、金融機関にとっては資金調達手段の一つとなり得る。

 

円投(為替スワップ)

円を原資に外貨調達を行う手法である。為替スワップは一言でいえば、「現時点において直物為替レートで円と外貨を交換し、現時点において決定した先物為替レートで、将来時点で外貨と円を交換し直す取引」と言うことができる。別の言い方をすれば、「直物取引を行い、先物取引で反対売買を行う取引」ということもできるだろう。

 

ここで、直物為替レートとは、現時点で行う為替取引のレートを表し、先物為替レートは、将来時点で行う為替取引のレートを、現時点で取り決めたもの、である。

 

(参考):

(日銀レビュー)最近の大手行の外貨資金繰り運営 : 日本銀行 Bank of Japan

 

 

証拠金規制とは何か

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本ページでは、証拠金規制とは何かについてまとめたい。一言でいえば、店頭デリバティブ取引において証拠金の授受を求めるものである。

 

以下、証拠金規制そのものについて議論する前に、まずこの規制が導入される背景についてから記述したい。

 

店頭デリバティブ規制の概要

2008年の金融危機において、一部のマーケット参加者の破綻が店頭デリバティブ市場を通じてシステミックリスクの拡大を引き起こしたと指摘されている。これを踏まえ、2009年11月のG20ピッツバーグサミットにおいて、一連の店頭デリバティブ規制について合意がなされた。さらに、2011年11月のG20カンヌサミットでは、清算集中を行わないデリバティブ取引における証拠金規制の導入について合意がなされた。これを受け、2013年にバーゼル銀行監督委員会(BCBS)と証券監督者国際機構(IOSCO)が共同で、証拠金規制の枠組みに関する最終報告書を共同で公表し、この報告書に基づいて各国で証拠金規制の導入が進められてきた。

 

カウンターパーティリスクとは

そもそも店頭デリバティブとは、取引所を介さずに、取引の当事者同士が相対で行うデリバティブ取引である。金利・通貨スワップや、CDSクレジット・デフォルト・スワップ)などが中心で、OTCデリバティブともいう。

 

そして、店頭デリバティブにおけるリスクに「カウンターパティリスク」があり、上述のG20の合意もカウンターパーティリスクを意識したものになっている。

 

店頭デリバティブで取り扱うスワップ取引においては、取引相手が契約通りに支払いを行うことが前提となる(スワップとは“交換”を意味するのだから、当然相手から貰うべきものを貰わなければ、“交換”は成立しない)。しかし、取引相手の財務状況が苦しく、契約通りに支払いができない可能性があり、それによって損を被る恐れがある。これこそがカウンターパーティリスクであり、取引相手の信用リスクということもできる。


店頭デリバティブは、取引所を介さずに当事者間で行われる取引であるため、その実態・全体像が見えにくいことが特徴である。一方で、このカウンターパーティリスクが顕在化し、実際に取引相手からの支払いが受けられなくなった際、例えばこの返済をもって別のデリバティブ取引における支払いに充てようと考えていた金融機関がいるとすると、この支払いも滞ってしまうということになる。

 

このように、一つのカウンターパーティリスクの顕在化が、他の取引参加者(典型的には金融機関)にも連鎖して広がっていくことで、金融システム全体に影響が広がる可能性がある。

 

清算集中義務

上述のカウンターパーティリスクへの対処のため、2009年のピッツバーグサミットでは、「集中清算機関を通じて清算されるべきである」との声明が発表された。日本では、2010年の金融商品取引法改正により、一定の店頭デリバティブ取引について、清算集中を義務付けることとされた(金融商品取引法156条の62)。

 

清算集中とは、取引を当事者間で終始するのではなく、中心に清算機関を置き、直接的なお金のやり取りを取引参加者と清算機関の間で行うことであり、清算機関がカウンターパーティリスクを吸収することが期待される。これによって、たとえある取引参加者が破綻しても、その影響を清算機関が吸収し、他の取引参加者に連鎖しないようにすることができる。

 

証拠金規制の概要

ただ、中央清算されない取引は依然として存在し、こうした取引を行う場合には、取引参加者間で証拠金を授受することを求める証拠金規制の導入が2011年のG20サミットで合意された。

 

日本では、この証拠金規制について、金融商品取引業等に関する内閣府令と、金融庁の監督指針で規定している。

 

具体的には、当初証拠金(IM, Initial Margin)と変動証拠金(VM, Variation Margin)の2種類がある。

 

AとBがデリバティブ取引を行っているとして、現時点でAがプラスのポジション(取引終了時に損をせず収益を得られる)を持っていたとする。このとき、取引が確定する前にBが破綻してしまうと、得られたはずの利益を得られなくなってしまうので、その分の担保をBからあらかじめ受け取っておく。これが変動証拠金である。

 

しかし、Bが破綻した時点から、ポジション処理が完了するまでにはタイムラグがあり、マーケットの変動によりポジションのプラス分が大きくなる可能性がある。このため、この部分の担保としてBから受け取るのが当初証拠金である。当初証拠金の算出にあたっては、数理モデルを用いて推計を行う必要がある。

 

これらの証拠金の導入により、マーケット参加者の破綻の影響が取引相手に連鎖し、金融システム全体に伝播していくのを防ぐことが期待される。

 

 

(参考):

証拠金規制対応支援 | PwC Japanグループ

大和総研(2010) 「店頭デリバティブ取引の清算集中」

銀行代理業の銀行法上の取り扱いについて

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本ページでは、銀行代理業の銀行法上の取り扱いについて整理する 。

 

まず、銀行法二条十四項において、銀行代理業は以下の通りに定義されている。

この法律において「銀行代理業」とは、銀行のために次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
一 預金又は定期積金等の受入れを内容とする契約の締結の代理又は媒介
二 資金の貸付け又は手形の割引を内容とする契約の締結の代理又は媒介
三 為替取引を内容とする契約の締結の代理又は媒介

 

銀行代理業を営むにあたっては、銀行法五十二条の三十六一項において、内閣総理大臣による許可が必要と定められている。

銀行代理業は、内閣総理大臣の許可を受けた者でなければ、営むことができない。

 

銀行代理業が営むことのできる業務の範囲は、五十二条の四十二一項において銀行代理業及び銀行代理業に付随する業務のほか、内閣総理大臣の承認を受ければ他の業務を営むことができる(逆に言うと内閣総理大臣の承認を受けない限り営むことはできないということである)。

銀行代理業者は、銀行代理業及び銀行代理業に付随する業務のほか、内閣総理大臣の承認を受けた業務を営むことができる。

 

以前は、銀行代理業を営むことができたのは銀行の100%子会社のみであったのに加え、銀行代理業以外の業務の兼営が禁止されていた。しかし、平成18年の銀行法改正により、一般事業者も銀行 代理業を行うことができるようになった。

 

なお、外国銀行の日本支店が本国の親会社やグループ会社などのために代理・媒介業務を行う場合には、「外国銀行代理業務」という別の業務として別途銀行法に定められている。