<金融アトラス/a>

金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

市場取引(マーケット)

レポ取引におけるヘアカットとは何か

本ページではレポ取引におけるヘアカットとは何かについてまとめたい。ヘアカットとは、一言でいえば、担保である有価証券の価値を額面から一定程度割り引いて評価することである。 代表的にはレポ市場での取引において用いられる。 レポ取引におけるヘアカ…

通貨危機と外貨準備ーロシアのウクライナ侵攻の事例ー

本ページでは、通貨危機と外貨準備をテーマにまとめたい。 通貨危機とは 通貨危機とは、ある国の通貨の対外的な価値が著しく低下し(つまり極端な通貨安になる状態)、その国の経済にとって大きな打撃となる状況を言う。 通貨の価値は国の信用力で決まる。国の…

デリバティブにおける「エクスポージャー」とは

本ページでは、デリバティブにおける「エクスポージャー」の概念について整理したい。 なお、ここでは、店頭(OTC)デリバティブを念頭に置いている。 デリバティブの時価 そもそもデリバティブにおける時価とは、将来に発生するキャッシュフローを無リスク…

デリバティブの損益通算で租税負担は軽くなる?

近年、デリバティブ取引を「損益通算」の範囲に認めることについての議論が続いているが、これはいったい何を目的とした議論なのか、本ページではまとめてみたい。 損益通算とは そもそも損益通算とは何か。金融商品には株や債券、デリバティブなど様々な物…

金融リスク管理における「三つの防衛線」とは何か

金融機関におけるリスク管理について、「三つの防衛線」という言葉がある。金融機関における内部統制の在り方を示したものであり、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)での文書でも明文化されているが、この「三つの防衛線」の考え方についてまとめたい。 金融機関…

デュアルカレンシー債とは何か

本ページでは、デュアルカレンシー債とは何かについてまとめたい。デュアルカレンシー債とは、一言でいえば、キャッシュフローの中で、受け取りが二つの異なる通貨によって行われる債券である。 債券のキャッシュフローについて まず、債券の取引においてど…

CAPMとは何か

本ページでは、CAPM(Capital Asset Pricing Model)とは何かについてまとめたい。CAPMとは、一言でいえば、ある資産の期待収益率と市場ポートフォリオの収益率の関係について記したモデルである。 CAPMの式 CAPMは以下の式で表される。 E(Ri) = Rf+ [E(Rm) − …

信用評価調整(CVA)とは何か

本ページでは、信用評価調整(CVA)とは何かについてまとめたい。信用評価調整(CVA)とは、一言でいえば、カウンターパーティの信用力の変化に伴い、デリバティブにおけるエクスポージャーの 時価評価を調整する枠組みのことである。 デリバティブの時価 そも…

社債の「スプレッド」とは何か

本ページでは、社債における「スプレッド」とは何かについてまとめたい。よく「A社の社債スプレッドが拡大/縮小した」とか、「○○セクターのスプレッドが拡大/縮小した」という言い方がなされるが、そもそも「スプレッド」とは何を指すのか。 スプレッドとは…

パッシブ運用の拡大はバブルを引き起こすか?

パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均やTOPIX)に連動する形の投資信託やETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。 パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を変…

日本で国際金融センターを目指す目的とは?

政府、東京都を中心に、日本で国際金融センターの確立を目指す動きが高まっている。世界中の金融機関が集積するニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどと並ぶ金融ハブを日本にも作るということだが、これによってどんなメリットがあるのかについて考えて…

危機が起こるとなぜ円高になる?ー「有事の円買い」ー

世界で経済不況や政情不安が起こると、円が多く買われ、 円高になる傾向がある。「有事の円買い」と呼ばれる現象であり、 驚くべきは日本で何か起こった際にも( たとえば東日本大震災など)、 円高になることがあるという点である。本ページでは、 なぜこう…

市場はどこまで完全か?ーマネタリスト、ニューケインジアンー

20世紀前半、ケインズは財・サービスに対する需要、つまり「有効需要」を喚起することこそが、一国の総生産量を増やしたり、失業対策を行う上で有効だと考えた。いわゆる「ケインズ派」と呼ばれる経済理論である。 ケインズ主義的政策は、1960年代までの欧…

SPAC(特別目的買収会社)とは何か

本ページでは、SPAC(特別目的買収会社) とは何かについてまとめたい。 SPACの概要 SPACとは、一言でいえば、企業の買収のためだけに設立され、 上場している会社である。そのため、SPAC自体は事業を行わず、いわば「空箱」 のようなものである。 上場して…

日本における1997年の金融危機について―個別事例の検証―

本ページでは、97年の日本の金融危機についてまとめたい。この時期、日本では多くの金融機関が破綻に追い込まれた。 三洋証券 証券業界の準大手であった三洋証券は、バブル期の積極的な経営(繰り返しの合併など)で成長を遂げた。しかしこれは、過剰な設備…

損失補填とは?損失補填が禁止される理由とは?

本ページでは、損失補填とはなにか、 そして損失補填が金商法上なぜ禁止されるのかについて考えてみたい。 損失補填とは 損失補填とは、 証券会社等が顧客の取引によって生じた損失を補てんすることである。たとえば投資家が証券会社Aの口座を通じて株取引を…

先物主導の株価指数の変化とは

マーケット情報などでしばしば、「先物主導で日経平均株価が値下がりした」といった表現を見かけることがある。この「先物主導」とはどういうことなのか、本ページでは考えてみたい。先物取引が現物の株価にどのようなメカニズムで影響を与えるのだろうか。 …

ブロックオファーとは何か

本ページでは、ブロックオファーとは何かについてまとめたい。ブロックオファーとは、一言でいえば、上場企業の大株主等が保有している株を売却する際に、証券会社が市場の外で株式を買い取り、市場の外で投資家に売却する取引である。 マーケットインパクト…

利益供与とは何か

本ページでは、利益供与とは何かについてまとめたい。 利益供与とは 一言でいえば、会社が株主の権利行使に関して、特定の株主などに対して財産上の利益を与えることを意味する。つまり、会社が利益を供与するのと引き換えに、ある株主が会社の株主総会の進…

株式指数の経済に与える影響について

パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均やTOPIX)に連動する形の投資信託やETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。 パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を変…

パッシブ運用の問題点ーアクティブ運用の意義とはー

パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均やTOPIX)に連動する形の投資信託やETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。 パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を買…

外為法改正に見る経済安全保障と経済成長のジレンマ

「経済安全保障」の重要性が近年強調されつつある。経済安全保障とは広範な概念であるが、民間企業の視点に立てば、技術や情報が外国に流出し、戦争行為等に利用されることを防ぐこと、と言うことができるだろう。 2019年、外為法(外国為替および外国貿易法)…

クレジットリンク債とは何か

本ページでは、クレジットリンク債とは何かについてまとめたい。一言でいえば、「国債や社債に、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を用いて別の企業の信用リスクを組み込むことで、より利率を高くした債券」ということができる。 CDSとは クレジットリ…

トレーダーの社会的意義、金融システムにおける役割について

日々短期的な利益を求めて株などの金融商品を売買するトレーダー。その個々人の動機は専ら「1円でも多く儲ける」ということである。しかし、これを俯瞰で見て、トレーダーには社会的にどのような意義があるのか、そして金融システムにおいてどのような役割を…

MMFの金融システムにおける役割について

本ページでは、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の金融システムにおける立ち位置について考えてみたい。 MMFとは MMFとは投資信託(ミューチュアルファンド)の一種。主に、企業が信用力に基づいて無担保で短期的に資金調達を行うための約束手形であるCP…

デリバティブと時価評価ーオフバランスからオンバランスへー

デリバティブはかつて、オフバランス取引として整理されていたが、2000年以降、時価会計の導入によってオンバランス取引として整理されるようになった。本ページでは、これについてその具体的な中身をまとめたい。 オフバランス取引とは オフバランス取引と…

プットオプションによるヘッジについて

本ページでは、プットオプションの売りヘッジについてまとめたい。 プットオプションの概要 オプションは、一言でいえば、ある商品を、決められた期日(または期間内)に、決められた価格で、売買できる権利ということができるというもの。デリバティブの一…

大阪堂島商品取引所におけるコメ先物取引廃止について考える

2021年8月、大阪堂島商品取引所はコメ先物取引の本上場が農林水産省に認可されなかったと発表した。これにより、それまで試験上場が続いていたコメ先物取引が廃止されたことになる。 コメ先物取引の歴史 コメ先物取引の歴史は江戸時代に遡る。1730年、江戸幕…

最良執行方針とは何か、またその現状について

本ページでは、金商法における最良執行方針に関する規定についてまとめたい。 最良執行方針とは 証券会社は、顧客からの有価証券の売買注文を受けて、市場で売買を実行する。有価証券の市場価格は刻一刻と変わり、いかに顧客にとって有利な条件で取引を実行…

ストラドル取引を用いた租税回避について

デリバティブを利用した投資手法であるストラドルが、租税回避に使われるという懸念があるという。本ページでは、ストラドルを用いた租税回避についてまとめたい。 ストラドルとは ストラドルとは、デリバティブ取引の「買い」と「売り」を両建てで取引する…