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金融アトラス

個人の勉強も兼ねて、少しずつまとめます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

株式指数の経済に与える影響について

パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均やTOPIX)に連動する形の投資信託やETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。 パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を変…

パッシブ運用の問題点ーアクティブ運用の意義とはー

パッシブ運用の規模が世界的に拡大している。インデックス(日本で言えば日経平均やTOPIX)に連動する形の投資信託やETFがアクティブ投信の規模を凌駕しつつある傾向が、世界的に見られる。 パッシブ運用の魅力は、アクティブ運用と比べて安いコストで投信を買…

外為法改正に見る経済安全保障と経済成長のジレンマ

「経済安全保障」の重要性が近年強調されつつある。経済安全保障とは広範な概念であるが、民間企業の視点に立てば、技術や情報が外国に流出し、戦争行為等に利用されることを防ぐこと、と言うことができるだろう。 2019年、外為法(外国為替および外国貿易法)…

「ホームカントリーバイアス」とは何か

本ページでは、ホームカントリーバイアスとは何かについてまとめたい。 ホームカントリーバイアスとは、投資家が、自国の株や債券などに対して資産配分の比重を多くする傾向があることを言う。 基本的なポートフォリオ理論では、相関関係の低い複数の資産を…

銀行における健全な競争と経営の安定のジレンマ

少子高齢化や人口減少の影響で、特に地方銀行において、経営が厳しくなっている。地方経済の縮小により、融資先が少なくなり、さらに長引く低金利環境により利鞘も縮小している。 進む地銀同士の経営統合 収益悪化に苦しむ地方銀行が大きくなると、一つの選…

日本の機関投資家による運用は「保守的」なのか?

日本の機関投資家は「保守的」と言われることがある。「保守的」というのは、運用にあたってあまりリスクを取ろうとせず、リスクが低いものリターンも低い資産に多く資金を配分しているということである。 機関投資家とは、典型的には企業年金など、集まった…

クレジットリンク債とは何か

本ページでは、クレジットリンク債とは何かについてまとめたい。一言でいえば、「国債や社債に、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)を用いて別の企業の信用リスクを組み込むことで、より利率を高くした債券」ということができる。 CDSとは クレジットリ…

トレーダーの社会的意義、金融システムにおける役割について

日々短期的な利益を求めて株などの金融商品を売買するトレーダー。その個々人の動機は専ら「1円でも多く儲ける」ということである。しかし、これを俯瞰で見て、トレーダーには社会的にどのような意義があるのか、そして金融システムにおいてどのような役割を…

MMFの金融システムにおける役割について

本ページでは、MMF(マネー・マーケット・ファンド)の金融システムにおける立ち位置について考えてみたい。 MMFとは MMFとは投資信託(ミューチュアルファンド)の一種。主に、企業が信用力に基づいて無担保で短期的に資金調達を行うための約束手形であるCP…

デリバティブと時価評価ーオフバランスからオンバランスへー

デリバティブはかつて、オフバランス取引として整理されていたが、2000年以降、時価会計の導入によってオンバランス取引として整理されるようになった。本ページでは、これについてその具体的な中身をまとめたい。 オフバランス取引とは オフバランス取引と…

プットオプションによるヘッジについて

本ページでは、プットオプションの売りヘッジについてまとめたい。 プットオプションの概要 オプションは、一言でいえば、ある商品を、決められた期日(または期間内)に、決められた価格で、売買できる権利ということができるというもの。デリバティブの一…

信用リスクとは何か

本ページでは、信用リスクとは何かについてまとめたい。一言でいえば、信用供与先の支払いが滞るリスクということができる。 「信用リスク」「信用供与」といった言葉は金融業界で頻繁に使われ、「信用を供与すること、そしてそれに伴うリスク」と説明される…

「与信」という言葉について

「与信」という言葉は金融業界で頻繁に使われ、「信用を供与すること」と説明される。しかし、「信用を与える」ことと言われても、具体的になイメージは湧きにくいのではないか。 やや乱暴であるかもしれないが、要するに与信とは「相手を信用すること」と捉…

大阪堂島商品取引所におけるコメ先物取引廃止について考える

2021年8月、大阪堂島商品取引所はコメ先物取引の本上場が農林水産省に認可されなかったと発表した。これにより、それまで試験上場が続いていたコメ先物取引が廃止されたことになる。 コメ先物取引の歴史 コメ先物取引の歴史は江戸時代に遡る。1730年、江戸幕…

銀行における金利リスクについて

本ページでは、銀行において「金利」がどのようなリスクを孕むのかについてまとめたい。 まず、銀行の業務は、貸出や預金を中心とした取引に関する銀行勘定と、短期的な売買益を確保するために行う有価証券などの取引に関するトレーディング勘定に大別される…

最良執行方針とは何か、またその現状について

本ページでは、金商法における最良執行方針に関する規定についてまとめたい。 最良執行方針とは 証券会社は、顧客からの有価証券の売買注文を受けて、市場で売買を実行する。有価証券の市場価格は刻一刻と変わり、いかに顧客にとって有利な条件で取引を実行…

二重課税の種類について

本ページでは、二重課税にはどのような種類があるのかについてまとめたい。 ①法人税と所得税 法人税は個人所得税の前払いとして機能するという考え方がある。個人の所得には給与所得以外にも、株式を保有していることによる配当や、株式を売却することにより…

法人税はなぜ課される?法人税の課税根拠について

本ページでは、法人税の課税根拠についてまとめたい。 応益説 まず法人税の課税根拠として挙げられるのは「応益説」である。これは、法人が政府から提供を受けた便益に対する対価として法人税を支払う必要がある、というものである。会社が経営を営むにあた…

ストラドル取引を用いた租税回避について

デリバティブを利用した投資手法であるストラドルが、租税回避に使われるという懸念があるという。本ページでは、ストラドルを用いた租税回避についてまとめたい。 ストラドルとは ストラドルとは、デリバティブ取引の「買い」と「売り」を両建てで取引する…

ストラドルとは何か

ストラドルとは、ある銘柄について、同じ権利行使価格のコールオプションとプットオプションを同じだけ保有する戦略をいう。 前提知識 そもそもオプションは、ある商品を、決められた期日(または期間内)に、決められた価格(権利行使価格)で、売買できる…

会社型ファンドと契約型ファンドのガバナンスについて

本ページでは、会社型ファンドと契約型ファンドにおけるガバナンスの違いについてまとめたい。 投資信託は大きく分けて「会社型投資信託」と「契約型投資信託」に分類される。前者は、資産運用会社が法人格を有する投資信託を設立し(投資法人)、この投資法…

外国税額控除について分かりやすく

本ページでは、法人税における外国税額控除の概要と、関連する制度についてまとめたい。 全世界所得課税主義 まず、日本の法人税は全世界所得課税主義の考え方をとっている。国内でビジネスをしても国外でビジネスをしても、同じ税率が日本で課されるという…

ベイルインとは何か

本ページでは、ベイルイン(Bail-in)とはどのような考え方なのかについてまとめたい。ベイルインは、金融機関の破綻時に、政府による公的資金の注入ではなく、金融機関の株主や債権者等に救済にかかる費用を負担させることをいう。具体的には、債務の元本削…

ソーシャルレンディングにおいて存在した匿名化と情報開示の問題

投資家から集めた資金をファンドを通じて企業等に貸し付ける「ソーシャルレンディング」を行う業者は、第二種金融商品取引業と貸金業の登録が基本的に求められる。このうち「貸金業」について、ソーシャルレンディング特有の論点がある。それは、「投資家が…

オフショア取引とはー外・外取引ー

「オフショア取引」または「オフショア市場」という言葉をよく耳にする。オフショアとは「海外」を意味するが、単純に海外の市場のことを「オフショア市場」というわけでもなさそうだ。 はっきりとした定義があるわけではないが、「主に海外の当事者どうしの…

IPOにおける公開価格と初値の乖離に関する問題

本ページでは、IPOにおける公開価格と初値の乖離に関する問題についてまとめたい。 新規上場(IPO、Initial Public Offering)において、主幹事証券会社により決定される売り出し価格である公開価格と、その後上場して初めて決まった市場価格である初値が乖…

外国子会社配当益金不算入について分かりやすく

本ページでは、外国子会社配当益金不参入制度についてまとめたい。この制度は、海外と国内で二重に課税が発生するのを防ぐものとなっている。 漢字が多くて分かりづらいが、言葉を補って書き直すと「外国子会社(からの)配当(を国内本社の)益金(には)不参入(…

「コア業務純益」と投資信託解約益の問題

本ページでは、主に地銀の収益性の文脈で議論される「コア業務純益」と投資信託解約益についてまとめたい。 銀行の収益性 銀行の決算資料を見ると、財務諸表の数値の他にも、収益性や健全性を示す指標が様々開示されている。 業務粗利益 銀行粗利益とは、銀…

"外部委託"が日系資産運用会社の海外運用を支えている

日本で売られている投資信託などのファンドには、様々な種類がある。日本株や海外株式、海外債券、不動産などなど。 日系の大手資産運用会社では、上記のような幅広いラインナップの商品が提供されている。しかしながら、日系の資産運用会社のファンドマネー…

CFC税制(タックスヘイブン対策税制)とは何か

CFC(Controlled Foreign Company)税制とは、外国子会社等を利用した租税回避を防止するために、一定の条件を満たす外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなし、日本で課税する制度である。タックスヘイブン対策税制又は外国子会社合算税制ともいう。 …